「品質を決めるのはお客様である!!」
~失敗を糧に今がある。

遡ること約20年前、家庭用電熱機器を開発していた頃の話

当時は住宅用キッチン電熱機器としては第一世代のシーズヒーター(円状、または渦巻形状)、第二世代のラジエントヒーター(ガラストップ構造)といった電気ヒーターを使用したものが主流でした。

一方、パワーエレクトロニクスの技術進化とともに、火元のない第三世代の電磁誘導加熱機器(いわゆるIHクッキングヒーター)が成長期を迎えていたころでした。

2000年あたりからオール電化住宅の広がりもあり、200V電源による高火力が得られるようになったことや、震災影響による火の出ない加熱機器に注目が集まっていました。当社もその流れに乗るべく、IHクッキングヒーターの開発に取り組むことになったのです。

それまでは一般的な電熱器やガス機器の開発経験はあったものの、電磁誘導加熱技術を扱うのは初めてでした。そのため他事業部の協力を得ながら要素技術開発と商品開発の両面で試行錯誤を重ね、ようやく製品化の目途がたち上市することになったのです。

ここから問題が・・・

市場へ投入してしばらくすると、お客様(OEM先)から、機器にエラーが出て使えないとの入電。

機器を現場で修理して再使用してもらうも、またエラーが・・・

技術開発段階の様々な試験を経て、万全を期して市場へ投入したという、メンバーの思い込みもありました。その結果、真因にたどり着くまで多くの時間を費やすことになったのです。

100人100様の使い方がある

お客様の使用状況の詳細なヒアリングや現場確認の結果、想定していなかった使い方があることが分かりました。

IHクッキングヒーターの普及に伴い、現在では協議会が認定した鍋等(SGマーク認定品)を使うことが、広く認知されていますが、当時はまだガスコンロが主流のため、お客様では特段使い方を意識されていない時代でした。

取扱説明書に記載されているようなメーカーが意図する使用方法だけでなく、“使用者が、間違いだと気付いていない使い方”があるということを再認識するのです。

お客様(OEM先)からの罵倒

OEM先からは「お宅は当社を市場モニター先として利用しているのか? 我々のブランドイメージが低下となった場合、どう責任を取るつもりか?」 

今までに感じたことのない、強烈な衝撃が走りました。

ようやく真因を突き詰め、市場対策を施し、当時の社長も品質対処の謝罪に向かいましたが、時すでに遅し。

これまで培ってきた、お客様からの「信用・信頼」は一瞬で水の泡となり、その後の関係性を修復するまで、相当の年月を費やすことになりました。

教訓、素直な心

当時は新技術の開発に時間を多く費やし、商品化できた満足に留まっていたのだと思います。

お客さまの目線にたって、妥協しないで取り組むこと、問題があればすぐに改善する、前向きな姿勢を貫くことが、欠けていたのです。

固定概念による知識や先入観、利害、感情などにとらわれない、ありのままを見ようとする心がないと、真実の姿、物事の実相にはたどりつけない。

開発段階から、マクロ視点・ミクロ視点を含めた、俯瞰の目を養うことが重要であるということを再認識した出来事でした。

失敗を財産として共有する


「失敗=マイナスイメージ」がどうしてもつきまといますが、当社では過去の失敗を、成長のための源泉となる財産として大事に扱っています。

課題を皆が共有・蓄積し、再発防止策を取り入れ、社内基準に落とし込み、安心安全な開発・設計を妥協することなく求めて、先の成果に繋げるべく取り組んでいます。

お客様からの指摘は財産

お陰様で当社は、これまでたくさんのお客様(ODM、OEM)と取引をさせて頂いています。
製品開発では国内外の安全に関する法規・規格等を順守することはもちろんですが、それだけではなく、過去の経験から培われたお客様の基準・規格、品質に対する考え方の擦り合わせを大切にしています。

また製造現場をチェックする工場監査では改善のネタとしてご指導を頂いたり、お褒めの言葉を頂いたりと、お客様からは様々なコメントを頂きます。


普段、私たちでは気付かない外部からの目線で見た意見を真摯に受けとめることで、先入観や感情などにとらわれない物事を客観的に見る力を養うことができる機会を得られています。

当社にとってお客様から頂くお言葉は非常に重要な財産となっています。

お客様の期待に応える

「品質を決めるのはお客様である!!」 

前身の会社から引き継いでいる品質についてのポリシーは不変です。

  • 過去の失敗事例やご指摘を教訓として真摯に受け止めきること
  • あくまでも個々のお客さまの評価や期待を品質づくりの起点とすること
  • お客さまのビジネスに対する理解と提供価値の向上に努めること
  • そして、これらを全社的な改善サイクルとして回し続けて行くこと

当社が事業運営を行うための生命線として、今もなお、継続して取り組んでいきます。

この先のお客さまの笑顔をつくると信じて。