IoT端末(HACCP温湿度センサー)開発に込めた思い

HACCP業務向け温湿度センサーの端末開発

私たちは、使う人や場所に合わせた、安心で安全なタブレットを作り上げることを大切にしています。

IoTは皆さんご存じだと思います。IoTは”Internet of Things”の略称、日本語では「モノのインターネット」などと言われます。これまでインターネットにつながれていなかったモノが、インターネットに接続され、遠隔でデータをやり取りする仕組みを指す言葉です。

たとえば近年、急激に普及したのはスマートスピーカー(対話型の音声操作できるアシスタント機能を備えたスピーカー)があります。さらに外出先からスマホを使って、自宅にあるエアコンや照明などの家電を操作したり、ドアやカーテン、シャッターの開け閉めを行なったりすることができるデジタル家電なども普及しつつあるようです。

当社で手掛けたのは、HACCP用のIoT温湿度センサー LIMNO TEMP-Tagになります。

その時の製品開発においての、私なりの品質へのこだわりについてお話しさせていただきます。

原因不明の不具合に悩むお客様からのご相談

HACCP(ハサップと読みます)とは “Hazard Analysis and Critical Control Point” の頭文字をとったもので、食品等事業者自らがおこなう衛生管理義務をさすものです。

正式には「食品等事業者自らが食中毒菌汚染や異物混入等の危害要因(ハザード)を把握した上で、原材料の入荷から製品の出荷に至る全工程の中で、それらの危害要因を除去又は低減させるために特に重要な工程を管理し、製品の安全性を確保しようとする衛生管理の手法」*1になります。

たとえば冷蔵ショーケースや冷凍倉庫・冷蔵運搬車などでも温度管理(計測・記録・コントロール)が義務化されています。

HACCP用の温度センサーは自動で温度を収集し、クラウド上にデータを収集、温度記録及び管理を行うためのIoT機器になります。

当時、半導体不足などに起因し、部品の納入が大幅に遅延する(LT:リードタイムの遅延)状況があり、ものが作れない、ものが入らないという時期でした。

その様な中、お客様よりHACCP用の温度センサーが入手できないというお困りごとを伺いました。

モノが入らないということ以外にも、原因不明の不具合があり、しかも原因特定ができないという課題を抱えておられました。

もともと当社は、通信技術を活用したOEM/ODM商品の開発を得意としていたため、自社開発にて製品を供給していくことを提案させていただき、自社製品として開発を開始することになりました。

お客様と現場のお困りごとからの開発

製品としてはシンプルな構造ですが、シンプルとは言え、同等の製品がないため、どのような場面で、どのように使われるのかを理解することから初めました。

現行他社製品や、ほか市場品にて同等の製品は沢山ありますので、それらも参考にはしましたが、それだけでは、実際にどのように使われ、使用される場面でどの様なお困りごとがあるのかを知ることはできません。

それらをもっと追究するため、まずは、お客様との打合せです。

お客様の使用環境や実際の作業方法などいろいろ対話をしながら、お客様が気づいていない課題がないかを確認することから始めました。

IoTの温度センサーは電池で動作するため、電池交換が必ず必要となります。電池交換をなくすることが一番の解決策とはなりますが、今回はコストの課題から電池内蔵として、定期的かつ簡便に電池交換を行うことが出来るようにしました。

実際の設置現場、たとえば大きな食品スーパーなどで電池交換を行う場合、一度に100個以上の交換が必要な場面があるので、交換をより簡単に短時間で交換できる方法を試行錯誤しました。

いろいろな形状をイメージし、CADで設計デザインと電池交換の具合も含めて、お客様と調整し、何度もデザイン変更を試みました。

最終的には、簡単に交換できて防水性を担保するため、円形上の形状とし、回転させて開け閉めする構造とし、短い距離で取外しできるようにしました。

防水性を確実とする為にビスは1本だけ残し、防水に必要な場所への取り付けを実現しました。

またこの工夫によって電池交換の時間も短縮することができました。

さらにHACCPの温度管理では温度センサーを冷蔵オープンショーケースの金属部分に取り付けることが多いため、ネオジム磁石をビスで固定して長期に低温環境下で設置されても磁石がはずれない工夫も施しました。

実は、当初、両面テープでの固定を検討していたのですが、両面テープの固定で実証実験を行なったところ、約3カ月程度で取外しの際、両面テープが剥がれ、温度センサーと磁石が分離してしまう不具合が発生することが分かりました。

案の定、両面テープでは、長期の低温環境下では品質を担保できないことが判明し、やはり想定していたことが起こったかと、設計変更したことに安堵しました。

使われ方、環境の把握から始めるものづくり

私の品質へのこだわりは、構造的にいかにシンプルな製品であっても、あるいは複雑な製品であっても、製品の使われ方、仕様環境を充分に把握することから始め、品質問題の起こる可能性がある項目を設計段階であらかじめつぶしていくことです。

一般的な考え方では、製品自体の故障が発生しないようにすることが、品質保証でしょうが、私は実際に使用する人にとってより使いやすい商品とすることも大切だと考えます。

また良かれと思って顧客目線で開発しているつもりが、いつの間にか開発者視点でのプロダクトアウトの設計となってしまう事も多々あります。

あくまでも起点を、使われ方、使われている環境からの課題に置き、使う人の身になってものづくりをすること、これが私の品質に対するこだわりです。

これまで、お客様の要望にとことん向き合い、納得のいくこだわりの商品を作り続けてきました。

今後も、より使用場面や、仕様環境を最初に把握し、高品質で使いやすい製品の開発を目指していきます。

*1:厚生労働省HP 「HACCPに沿った衛生管理の制度化について」より引用https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/haccp/index.html